大西コラム COLUMN 「常在戦場」

巨大地震に備えて民間団体が行なっていること【藻谷浩介×大西健丞】

vol.14

2023.12.7

ピースウィンズ・ジャパンの代表である大西が、地域エコノミストとして活動されている藻谷浩介さんと対談を行いました。この記事では、対談動画の中から要旨をまとめてご紹介しています。

動画も、以下よりぜひご覧ください。
【藻谷浩介×大西健丞】里山資本主義が世界を救う?必ず来る巨大地震に備えて政府ができないことNPOができること

藻谷浩介: 地域エコノミスト。(株)日本総合研究所 調査部主席研究員、(株)日本政策投資銀行 地域企画部 特任顧問 (非常勤)。

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里山資本主義は藻谷さんの提唱されている概念で、里山のような身近なところから水や食料・燃料を手に入れ続けられるネットワークを用意しておこう、という思想を指します。今回の対談では、里山資本主義と絡めて、ピースウィンズ・ジャパンでの取り組みについて話しています。

人道支援の経験を活用して地域活性化

ピースウィンズ・ジャパンのようなNGOは、紛争地帯ではロジスティクスを自分たちで作って活動していかなければならない。そのロジスティクス能力を使って、地域活性化のための面白い取り組みを行おうとしています。
例えばピースウィンズ・ジャパンの運営している空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は災害時に緊急で駆けつける医療プロジェクトですが、平時に何もしないのではもったいないので、診療所で対応するなど、普段は町のために活動しています。

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コロナ禍には、町の診療所でワクチン接種を行いました

首都圏から離れていることによるメリット

幕府から敢えて離れて活動して成功したという事例が歴史上の出来事には複数ありますが、わざと中心から外して勢力を持って活動することは、現代においても有効なのではないか、と思っています。

例えば、現在ピースウィンズ・ジャパンは、本拠地を広島県神石高原町に置いていますが、コロナのクラスター発生時、広島県から、クラスターを抑えるチームとして唯一業務を委託され、活動しました。広島県に本拠地があるからこそ、広島県のサポートをいち早く担うことができました。

また、当時ピースウィンズ・ジャパンは日本最大の防護服ストックを持っていましたが、それらをコロナ禍で寄付することができました。いつか鶏インフルエンザやSARSの変形ウィルスが流行すると想定して備えていたもので、少なくとも自分たちが使う分だけを持っておこうとしていましたが、コロナ禍の中で活用することができました。

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2020年に行った支援先の皆様

なんでも東京基準で考えると、コスト的にも場所的にも、東京だから諦めないといけない場面があったりします。
首都圏から離れ、佐賀県に備蓄を行っていたことで、広大な土地に大量の物資をストックしておくことが可能だったのです。

 

地震への備え

南海トラフ大地震は、想定では2029年に発生すると考えられています。最も短いとしてあと6年の間に、備えておかなければいけません。

疎開先を持っておくこと

人口集積は、地震には弱いものです。災害によって亡くなってしまうという面もありますが、補給が耐えたところに人がたくさんいるということが、より一層大変な事態をもたらします。
また、南海トラフの地震については、相模トラフや富士山の噴火など、周囲の自然災害が併発する可能性もあり、近隣地域一体が被災地になってしまうリスクもあります。そのために、都会から逃げられる場所を持っておくことが重要であると、藻谷さんは日々伝えています。

東日本大震災の際には、”自分の居住地域以外の県では補償が受けられなくなるかもしれない”という話があったため、比較的、所得の低い人々が被災地に残るという事態が発生しました。政府としても、県を超えて逃げるという想定ができていなかったのだと思います。
東京で同じように物資が滞った場合に誰が助けるのかを、今から考えて行動しておかなければなりません。

 

民間団体だからこそできることがある

大西は社会人デビューがイラクのクルディスタン、無政府状態の土地でした。現地で民間が実行した方が公益事業よりも早く・クオリティ高く活動できる事例をたくさん見たことから、「政府って、意外となくても良いのでは」と考えるようになったと大西は言います。
日本は「公益は行政が担う」という状態を主体として進んできたため、民間主体での活動を受け入れられづらいですが、災害時はどうしても、行政の支援だけでは足りなくなります。非常時に公営団体と共に活動できるよう、民間も、準備を進めていくことが必要です。

災害医療船を導入

ピースウィンズ・ジャパンでは今年、災害医療支援船を導入しました。
ヘリだけの支援では燃料がすぐに尽き、重いものも積めません。非常時にフィールドホスピタルを作っていても、バックアップが必要であったり、トラックが現地まで進めないケースもあり得ます。船の積荷をヘリで上から現地へ運ぶといったケースを想定し、支援船の導入に至りました。

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空飛ぶ捜索医療団の持つ災害医療支援船「Power of Change」。今治に停泊予定です。

災害医療支援船の導入は、2004年のスマトラ島沖地震発生時から考えていました。当時、シンガポール軍がヘリパットのついている船を用いて支援活動を行っており、コルベット(小型の軍艦)からヘリに飲料水などを積み込み、現地に運んでいました。大西らも支援に向かっていたものの、トラックで支援物資を運ぶまでには、2週間もかかりました。そこでの経験から、ヘリと船の連携が緊急時に役に立つと実感しました。

現代のプライベーティアになる

プライベーティア(私掠船)は、戦争状態にある国において、国から許可をもらい活動していた個人船のこと。公認の民間船のようなイメージです。
大西は、災害医療支援船を、現代におけるプライベーティアのようなものにしたいと考えています。民間ではあるものの、プロフェッショナルを育て、大規模災害発生時に公営の団体と混ざってオペレーションができる状態が理想的です。そのために、公共の部分を民間が担うための人材と資金のフローができれば、今よりも良い支援活動ができるようになります。

 

共感によって人を動かす

日本の寄付市場はまだまだ小さい

日本の寄付市場は今、ふるさと納税を入れると1兆5000億円。一方、アメリカは40兆円を超えています。人口が3倍弱違いますが、単純計算で、日本の10倍以上の寄付が集まっているということになります。

経済は成長すると言いますが、地球は有限。成長したら嬉しいわけではなく、循環再生を望んでいます。そこに共感のフローを足したいと大西は考えています。お金儲けだけではなく、それぞれ個人が共感するものにお金を回していけるようにできたら、うまく寄付の文化が回っていくのではと考えています。

ピースウィンズ・ジャパンの行う遺贈寄付

現状、高齢化により、使い道のない莫大なお金が眠っています。”税金は払いたくないが、NGOには協力したい”というお金持ちも増えています。
ピースウィンズ・ジャパンでは「遺贈寄付」という形で、亡くなった後に残った遺産を寄付に充てるという活動も行っています。

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保護犬事業にご寄付をいただいた方々のお名前を、広島にある犬舎に掲示しています

遺贈寄付による寄付が進んできたことで、国家予算とは別に、公のための経済として動き出している実感があります。

ただ、ご寄付をいただける本人と話せず、亡くなった後に代理人や弁護士と話をするケースが複数あります。遺贈寄付は英語で言うとレガシーギフト。せっかく寄付をいただくのであれば、その方の名誉のためにも、亡くなる前に「どういったお金で、何を期待していただいているのか」を知るために打ち合わせができたらと思っています。

 

共感とショックで寄付市場を動かしていく

共感は言うは易し。
保護犬事業では初年度、500万円の収入に対して支出が1億1000万円ありました。理事会には怒られました。
ただ、”保護した野犬であった夢之丞を災害救助犬に育成して、人に捨てられた犬が人を救う”というシナリオを作ることができたら、国民にショックを与えられるだろうと考え、保護犬事業を実行。実際に夢之丞が災害救助犬として活動したことから、感動と共感の流れが生まれてきました。

マーケットを動かすためには、まずショックが必要であることがよくわかりました。

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災害救助犬として活動した夢之丞

人間には、弱いものを守らないといけないという本能があります。共感能力が他の動物よりも優れていたから人は生き残ってくることができました。その中で、寄付文化は今後もっと育ちます。東日本大震災では、それまで2,000~4,000万円だった寄付市場が一気に1兆円になりました。日本は、地面を揺すぶられると覚醒します。

自分たちでリソースを積んで、うまく使ってくれる団体に渡す、という社会になっていけばと思います。そのためにもNGOは、国ができないことでも資金をたくさん集めて活動していかなければなりません。

 

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。広島県に本拠地を置き、民間団体として活動しているピースウィンズ・ジャパン。今後発生しうる大規模災害に備えて、今後も活動していきます。